敢えてラポールを切るとき

 

昼下がりの地下鉄の中で。

 

突然、割と至近距離から

「女性コーラス」のハミングが聞こえてきた。

 

普通の鼻歌よりも一段上の、“本気のハミング”。

由紀さおり姉妹みたいな、あんな感じの歌声。

 

「ん?音漏れ?」と思って声の方を見ると、

推定60代と思われる私の母ぐらいの年代の女性が耳にイヤホンをしている。

 

私の母もコーラスをわりと本気でやっているので、

「ああ、この人もメロディーか歌詞のお手本か何かを 聞いているんだな」と、

少し微笑ましい気持ちになり目線を元に戻した。

 

しばらくして、またハミングが聞こえる。

…どうも、変。なんか声が生々しい。

まさか…と思いながら恐る恐る声の方を見ると、

 

おばちゃんが、譜面を見ながら歌っているのだ!

え、ここ電車の中ですよね??

 

イヤホンは音漏れしないようにしっかり耳に入れているのに、電車の中で普通に歌練習。

みんなチラチラおばちゃんの方を見ているが、全く気づかずに歌練習。

偶然同じ駅で降りたのだが、ホームでもエスカレーターでも歌練習。

 

すごい。笑えるネタとしてはいいのだが、

この「周りを気にしないっぷり」はすごい。

 

マーケティングインタビューの対象者にこういう方がいると、

場の「ラポール」をキープするのに少々テクニックを要する。

 

「周りを気にしないっぷり」がすごいと、

「聞かれたこと」ではなく「話したいこと」を話してしまうため、

テーマが逸れたり時間が延びたりしてしまうからだ。

すると他の対象者の方にも微妙な空気が流れてしまう。

 

そういったことが起こらないように、

その方とのラポールはさりげなく切り、

“場”のラポールを壊さないよう注意してインタビューを進行する。

 

“場”のラポールを維持するために

“場”を乱す人とのラポールは敢えて切るといったコントロールも

インタビュアーの大切な仕事なのだ。

 

もちろん、当の「周りを気にしないっぷり」がすごい人が不愉快になって怒らないように

あくまでもさりげなくラポールを切る。

 

ラポールは、作るだけでなく切ることもできてこそ、コントロールできるのだ。

 

そんなことをつくづく思い出させてくれた

おばちゃんの歌声だった…(しかし驚いた)

 

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